●食べ物の不思議(03年9月6日)
食べ物の栄養成分は糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなど。日常生活ではこれらをバランスよくとることが大切ですね。
加えて、知っていただきたいことが食べ物の性質、「温」、「冷」のこと。食べ物には体を温めたり、冷やしたりする作用があるのです。
たとえば次のとおりです。
| (温める) |
(中間) |
(冷やす) |
| ネギ、生姜、カボチャ |
じゃがいも、キャベツ |
きゅうり、トマト |
| ししゃも、いわし、えび |
いか、にしん |
貝、たこ |
| もも、さくらんぼ |
りんご |
バナナ、いちご |
| 羊肉、鶏肉、牛肉 |
豚肉 |
馬肉 |
| 紅茶 |
牛乳 |
緑茶、コーヒー |
涼しかった夏?も終わり、これから秋を迎えるシーズン。体に冷えを感じるようになったら、ときにはお粥にネギや生姜を入れてみるとよいでしょう。体がポカポカしますよ。また、意外なのが緑茶です。体を冷やす作用があるので、秋から冬にかけては気をつけてください。
●食べ物の味(03年9月25日)
「五味」ということばをご存知ですか。
食べ物の味による分類で、酸味(すっぱい)、苦味(にがい)、甘味(あまい)、辛味(からい)、鹹味(しおからい)の五つをいいます。
今回はこの五味について。
| 分類 |
作用 |
代表的な食べ物 |
効く症状 |
| 酸味 |
収斂(止める・収める) |
梅干 |
下痢止め、咳止め、汗止め |
| 苦味 |
泄降(下に降ろす)
燥湿(湿気をとる |
アンズの種
ニガウリ |
喘息
皮膚の湿気 |
| 甘味 |
滋養(おぎなう)
緩和(やわらげる) |
米、豆類
ナツメ、はちみつ |
疲労
痛み |
| 辛味 |
発散(発汗させる) |
ショウガ、ネギ |
風邪の初期治療 |
| 鹹味 |
軟堅(やわらかくする) |
昆布・海藻 |
甲状腺の腫れなど |
このように食べ物ごとに作用が分かれています。
味も5種類をバランスよくとることが健康の秘訣ですね。
鹹:「かん」と読みます。
●冬の旬の食べ物(03年10月25日)
03年10月25日は、旧暦の10月1日。自然の四季と密接に連動している旧暦では、この日から冬の季節。そう、春の訪れは旧暦1月1日ですね。
そこで冬の寒さに負けぬよう、温の作用がある旬の食べ物を紹介しようと思います。
【ねぎ】
味は辛。体を温め、発汗作用があります。寒気がする風邪のひき始めには、白い部分を細かく刻んで熱湯に注いで飲むと効果あり。おかゆにして食べるのも良し。
【かぶ】
味は辛。胃腸を温める働きがあり、昔からお腹の薬として有名。
【ヤマイモ】
味は辛。東洋医学で一番大切と考えられている臓腑、腎の機能を補う食べ物。漢方では「山薬」という名の生薬です。
【まぐろ】
味は甘。体を温め、血行を良くする働きも。DHA、EPAが豊富で動脈硬化の予防に良いです。
【くるみ】
味は甘。滋養強壮に効き、冷え、便秘に良く、疲労回復、美肌効果にも。ただ脂質が多いので食べすぎには注意を。
●陰陽論と食べ物(03年11月13日)
東洋医学の考え方、陰陽論をご存知でしょうか。自然界すべては、陰と陽とのバランスで成り立っているというものです。
たとえば太陽が陽で、月が陰。夏が陽で、冬が陰。昼が陽で、夜が陰。
人体では背中が陽、お腹が陰です。また人の体質にも陽性、陰性があります。
これらの関係は表と裏、互いに反発し合うもの、あるいは交互に変化するものともいえます。
もちろん食べ物にも陰陽の区別があります。
体を温める作用のあるものが陽性、冷やす作用のものが陰性の食べ物です。
がっちり型、肥満ぎみ、血圧が高め、体温が高めなどという陽性体質の人は陰性の食べ物を、痩せ型、血圧が低め、体温が低め、かぜをひきやすいなどという陰性体質の人は陽性の食べ物をとり、陰陽バランスをよくすることが肝心です。
●更年期に良い食べ物(03年12月3日)
女性が更年期になるとさまざまな症状があらわれます。
頭痛、肩こり、動悸、汗かき、のぼせ、いらいら、情緒不安定など・・・
東洋医学では、こう考えます。
汗かき・のぼせは、月経が終わることによる血の不足から生じたアンバランスな熱(お風呂の空焚きみたいなもの)が原因と。頭痛や肩こりは、体を流れている気の巡りが停滞(交通渋滞みたいなもの)しているためと。
更年期でお困りの方はホウレン草、レバーで十分血を補ってください。くわえて、かぼちゃで胃腸の働きを良くし、にんじんで元気を補なってください。
さらに、おすすめしたいのがナツメ。漢方薬では大棗(たいそう)という生薬として用いられています。ナツメを食べると気持ちが和らぎ、気の流れを良くしてくれますので、ぜひいちどお試しください。
●漢方粥(04年1月18日)
ふだんの食事の中に、お粥を取り入れてみてはどうでしょうか。
残ったご飯を利用すれば手早く作れます。少量をおかずの一品に、あるいはおやつ代わりにもどうぞ。
【せり粥】
春の七草のひとつ、せり。鎮静作用が高ぶった精神を和らげてくれます。頭痛、めまい、目の充血に有効。また血圧を下げる効果も。
【ごま粥】
ごまは、五臓を補って気力を増すといわれています。老化防止はもとより、貧血、慢性の便秘にもどうぞ。ごまは粒のままではなく、すりごまの方が消化によいです。また白ゴマと黒ゴマとがありますが、黒い色の食べ物は腎の機能を高めてくれますので、黒ゴマを使ってください。
【枸杞(くこ)の実粥】
目によいことで有名な枸杞の実。中国では不老の妙薬といわれています。とくにめまい、耳鳴りでお困りの方におすすめです。
【ネギ粥】
手軽に作れる一番簡単なお粥。ネギには血液循環を良くし体を温め、発汗を促す作用があります。風邪をひいたとき、冬の寒い時期に食べると良いです。ネギは白い部分をみじん切りに。
【生姜粥】
冷奴にはおろし生姜を付けるように、生姜は冷たい食べ物から胃腸を守ってくれます。生姜の辛味の成分が血液循環を良くし、発汗を促進。体を温め「気」の巡りも良くしますので、元気、やる気が増します。
●血虚(けっきょ)、なんのこと?(04年2月22日)
「血虚」。東洋医学の言葉のひとつで、血(血液)の量が不足している体の状態をいいます。そう、つまり貧血ですね。
貧血のほとんどは鉄欠乏性貧血。体内の鉄分不足からくるもので、若い女性に多くみられます。
大きく影響しているのが月経や子宮筋腫などによる出血。しかし原因は食習慣にも。
生野菜を中心としたダイエット、偏食も無視できません。
そこで今回は、血虚、貧血の改善策を。
鉄分というとレバー、ほうれんそう、小松菜、干しひじきが代表選手。ですが、ほとんどの魚介類や豆類にも鉄分が含まれています。たとえば、わかさぎ、あさり、煮干、納豆、豆腐・・・(どうやら和食が良さそうですね)。また鉄分を体内に効率よく吸収させるにはビタミンC、カルシウム、たんぱく質が必要ですし、赤血球(ヘモグロビン)を作るにはビタミンBなどが不可欠となります。つまり鉄分だけを大量に摂取してもダメ、ということ。さまざまな食べ物の力を借りなくてはなりません。魚・肉・豆・野菜・果物、バランスの良い食事が大切。
加えて東洋医学では、血虚は冷えからくるとも考えています。温かい食事をいただくよう心がけてください。
朝はヨーグルト、昼はファーストフード、夜はレトルト。こんな偏った栄養、冷えの元となる食事していませんか?
貧血の治療は、医師の診断のもと鉄剤を服用することが基本となります。
それと、食習慣の見直しが肝心だということも忘れないでくださいね。
●山菜は、なぜ苦いの?(04年3月20日)
たらの芽、ふきのとう、わらび、ぜんまい・・・。おいしい春の味、山菜。
料理もお好みに応じて、天ぷら、おひたし、ゴマ和えなどと楽しみがいっぱい。苦みばしった味が、季節を感じさせてくれます。
でも、なぜ、春の山菜の味は、苦味なのでしょうか。
まず四季と陰陽の関係を考えてみましょう。秋冬は陰で、春夏は陽。春はまさに、自然界が陰から陽にバトンタッチするとき。陽は活動を表し、人の気もグングン動き出します。冬にとった食べ物から、体内に貯蔵・温存された栄養やエネルギーがその源。
しかし同時に、毒素や老廃物も蓄積されています。この不要物は外に出さなければなりません。
さて、山菜の苦味。作用は湿気をとったり、排便を促進する働きなど。これが体の余分な水分滞留や便通を改善してくれます。この作用のおかげで、毒素や老廃物は汗、尿、大便として、体の外へ排泄され、体がメンテナンスされます。
そういえば、漢方薬には苦味が多い、ことに気づきます。良薬は口に苦し、とも言います。
春の食材は、体をきれいに掃除してくれる、自然の薬ですね。
●医師は医者だけじゃない(04年4月29日)
薬膳、鍼灸、漢方薬などの東洋医学は、源流は古代中国にさかのぼります。
中国の古書『周礼(しゅらい)』によると、紀元前の周の時代には最古の医療制度が整備され、宮廷には医師という官職がおかれました。
医師は、食医(栄養医)、疾医(内科医)、瘍医(外科医)、獣医の4種に区分・格付けされています。
食医は今日でいう栄養士で、宮廷の食・飲・膳を管理する役目を担っていました。興味深いのは格付け。この食医は最高ランクです。さすが中国三千年、四千年ともいわれる薬膳の国ですね。食べ物で健康を守る食養生はじめ、古くから伝わっているものはどれもこれも体に優しく安心です。
(参考文献 小曽戸洋「漢方の歴史」大修館書店、傅維康「中国医学の歴史」東洋学術出版社)
●梅雨の湿気は脱水機で(04年5月30日)
梅雨の湿気。胃腸があまり丈夫でない人は用心です。東洋医学ではこう考えます。
胃腸が弱いと消化吸収機能が上手に働かず、体内は水分だぶつき状態に。一方、体の表面は湿気でジメジメです。
つまり体は、体の内と外から水攻めのダブルパンチ。水分は溜まるばかりです。
この余分な水分は体に悪さします。水分が上にのぼると頭痛、めまい、耳鳴りが、胃にたまると気持ち悪くなったり吐き気が、腸にたまれば下痢となります。
また湿疹や、関節痛、リウマチなども、余分な水分のしわざです。
蒸し暑いと、どうしても冷たい飲み物や食べ物につい手が・・・。でも、ここは少し辛抱を。
「冷やす」は胃腸を弱める原因。やはり胃腸をいたわる「温める」ことが肝心です。
また余分な水分は、どんどん外へ出す工夫も。
食べ物ではシソの葉、もやし、きゅうり、昆布、えんどう豆、レタス、さくらんぼ。水を外に出す作用があります。
そしてなによりも、体を動かすことが大切。脱水機のように汗を大いに絞り出してください。
余分な水分をためないことが、梅雨を上手に乗りきるコツです。
●夏こそ冷えにご用心(04年7月10日)
暑い夏は冷たいもの、生ものを食べる機会が増えます。つい油断して、お腹をこわすこともしばしば。
上手な夏の乗りきり方は、食べ物の陰陽バランスがポイントです。
体を冷やす食べ物が陰性で、体を温めるものが陽性。生野菜は陰性。だから食べすぎは冷えを強くします。陽性の温野菜との調和を心がけてください。
アイスコーヒーには十分気をつけて。コーヒーはもともと体を冷やします。なので、冷たいコーヒーはダブル陰性。ときには陽性の紅茶、ほうじ茶を飲んでください。
なかにはこんな見事な陰陽の調和もみられます。
冷奴に合わされた生姜。そうめんの薬味、ネギ。冷たい生魚の寿司にはガリ(生姜)が。
どれも、絶妙な陰+陽です。
●女性の生理にも陰陽サイクルが(04年9月13日)
東洋医学の特徴のひとつ、陰陽の考え方は、女性の生理についても当てはまります。
基礎体温の低温期が陰、高温期が陽と考えます。生理の1周期には、この陰と陽がバランスよく向かい合っています。女性の体の中は、自然に陰陽サイクルが発生しているのです。
日常生活をおくる上で、気をつけたいのは陰の低温期。
とくに生理中の5日間から7日間ほどは、陰性が大きい期間です。冷たい食べ物や飲み物は注意しなければなりません。生理中に体を冷やすということは、入浴中の浴槽の中に大きな氷を入れるようなもの。
陰性の強いアイスクリーム、果物、ケーキなどを取りすぎると、生理が乱れる結果につながることも。体が陰性に傾き過ぎ、陰陽のバランスが崩れると、冷えはたまり、生理周期は遅れがちになることもあります。ときに生理が半年に1回などと。
女性の体のためには、生理中に温かい食べ物や飲み物をとることは大切ですし、血の不足も補わなければなりません。肉ではレバー、魚ではサンマ、サバ、イワシなどの青魚がよいでしょう。鉄分が多いので血を補ってくれます。鉄の吸収を助けるビタミンCを多く含む野菜もバランスよく食べてください。また腎や肝を整えてくれるナツメやクコの実は、生理の名サポート役としても知られています。


食養生ころころ
このコーナーでは、食べ物による養生をお伝えしようと思っています。
少しずつ書いてゆきますので、ときどき偵察に来てくださいね。